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G の天体写真 ~ 主に銀河を撮ってます。

Moravian G2-8300冷却CCDカメラ

チェコ製のカメラで、現在の主力機です。以前の主力機であるQSI504wsと比べてみます。
Moravian G2-8300冷却CCDカメラ_b0203904_19414812.jpg

Moravian G2-8300冷却CCDカメラ_b0203904_19424993.jpg

大きさ:G2>QSI
重 さ:G2≒QSI
冷却能力:G2>QSI
ダウンロード時間:G2-8300(12秒)<QSI583(21秒)
騒 音:G2<QSI(FAN高速回転時)、G2≒QSI(FAN低速回転時)
質 感:G2<QSI
フィルタ交換のしやすさ:G2<QSI
カメラ制御ソフト:G2(SIMS/SIPS)<<QSI(MaxIm、ただし別売り)

比較項目として思いついたのはこんなところです。気になるカメラボディのノイズは比較のしかたが分からないので書いてませんが、どちらも低ノイズだと思います。
つづきはこちら↓ 長文です。



QSI504wsは私の最初の冷却CCDカメラです。私が買ったときは国内に取り扱い店が無かったので個人輸入しました。2台目のMoravianも個人輸入です。2台目のカメラを買うとき、どちらのメーカーのカメラを買うか、もちろん悩みました。高額商品なので既に使っている実績を考えればQSIを選ぶのが安全です。しかし、冷却能力の高さとダウンロード時間の短さが決めてでMoravianを選びました。遅いのは困るし、冷却CCDは冷えてナンボだろ。って感じで。この辺はQSI600シリーズで改善されるようですから、今ならQSIの方が魅了的かも。
ニュートン式望遠鏡で撮ることを考えていたので、これらのカメラのバックフォーカスの短さはかなり魅力で、他のメーカーのカメラはあまり検討しませんでした。ケーブルの取り回しとか重量の面でもフィルタホイール一体型のほうが良さそうだし。KAF-8300で1.25インチのフィルタが使えるのも魅力です。実際にはちょびっとだけケラレました。私としては問題ない範囲です。ちなみに下図はCT10+パラコアで合成F5.5での結果です。これより明るい光学系を使うと、もっとケラレると思います。
Moravian G2-8300冷却CCDカメラ_b0203904_19432023.jpg


冷却能力がジマンのMoravianですが、その冷却に少し不満な点が2つあります。
・たとえ外気温が-5℃とか寒い日でもCCD温度が-31℃以下には下がらない。いや、実際には冷えているような気がするので、カメラ内蔵の温度計がコレ以下を測定できないのかも知れません。ちなみにQSIは冷却の限界を試していないので、どこまで冷やせるか分かりません。
・画像をダウンロードするたびにCCD温度が2~3℃上がってしまう(私の環境だけなのかなぁ)。ダウンロード中はペルチェの電源が切れているのかも。1分くらいで元の設定温度に戻るし、ダークが合わないとかの実害は感じませんが、キッチリやっている人には「ダメじゃん」ってことになるかも知れません。

シャッターについて。QSIは0.03秒、Moravianは0.09秒のシャッターが切れますから、QSIの方が優秀です。QSIのシャッターは丈夫そうな厚手の円盤で、Moravianのはペラペラの板。見た目はQSIの方が断然いいのですが、重そうな円盤がブンブン回るのと、軽そうな板がヘロヘロ回るのはどちらがいいのだろう。要するに振動が心配なのですが、実際には全く問題なしです。

カメラ制御ソフトについて。QSIはソフトが別売りでした。MaxImとかのドライバ(プラグイン?)はもちろん、MaxIm本体も付属のCD ROMに入ってますが、ライセンスキーはお金を払わないと教えてくれません。この辺のことを理解せずにカメラだけを買ったので、アメリカからカメラが到着したけど、ソフトが無いから使えない・・と言う悲しい事態になりました。もちろんソッコウで買いました。
・ユーザーインタフェースは、さすがにMaxImの方が洗練されていると思います。SIMS/SIPSは半年以上使っても、未だにミスオペすることがあるのです。ただ、SIMS/SIPSには魅力的な機能があります。⊿℃/分の設定があって、毎分3℃とか、徐々に冷やす、徐々に温めることが出来ます。一気に冷やしてもカメラが壊れることは無いのでしょうが、精神的によろしくない。私がQSI用に買ったMaxIm LEは廉価版のせいかQSI以外のカメラが使えません。フルバージョンのMaxIm DLならMoravianを制御できるし⊿℃/分設定もあります。
・SIMS/SIPSの画像の座標が普通でない。画像処理ソフトの原点(0,0の位置)は、普通は左上ですよね(フォトショップとか、ステライメージとか、MaxImも)。でも、SIMS/SIPSは左下なんです。まぁ、グラフとかの印刷物はそれが普通なのですが・・。その所為か、SIMS/SIPSで撮影した画像をステライメージで読み込むと、上下逆さまになります。ちょっとビックリしますが、なおすのは簡単なので実害はないです。新しいMoravianのMaxIm DL用ドライバは原点を左上に変えたようです。
・SIMS/SIPSのFITSヘッダの設定がデフォルトのままだと、ステライメージでカメラ型番や、露光時間が見えません。特に後者は問題で、このままではダークライブラリが使えません。SIMS/SIPSの設定変更で対応できます。

まだやったことがないので比較できないことがあります。除湿剤の交換です(実際にはオーブンで再生して戻すだけ)。どちらもユーザーが交換できそうですが、取説はMoravian の方が分かりやすいです。私の予想に過ぎないのですが、QSIは自分で交換すると冷却能力が少しだけ下がるかも知れません。QSIはCCDチャンバーにアルゴンガスを充填していますが、除湿剤交換時にコレが抜けて空気が入ってしまうでしょう。すると比熱の差で冷えが悪くなってしまいそう。1~2℃程度でしょうが。。一方、Moravianは何も書いてないから普通の空気のままだと思います。

あと、気になるのは耐久性ですね。こればかりは何年も使ってみないと分かりません。Moravianはまだ半年しか使ってませんから何とも・・。とりあえず、QSIは3年間故障なし、結露なしです。

私のMoravianの個体はいわゆる「ハズレ」でした(泣)。
・シャッター板が折れ曲がっていて回らなかった。普通なら返品です。個人輸入ってこともあり、面倒だったので自分で直しました。
・カメラのシステムドライバが古くて、フィルターホイール制御にバグがありました。途中で止まることしばしば。メーカーのホームページから最新版を拾って、コレに書き換えたら直りました。
・AC-DC電源アダプターが1ヶ月で故障。電源が入らなくなりました。これも交換が当たり前。でもDC12電源は予備を持っていたので、面倒&時間を考えて自分でコネクタだけ付け替えて交換しました。

う~ん、「QSIの方がいいよ」的な記事になってしまった気もしますが、Moravianはいくつかの初期不良を自力で乗り切ったあとはノープロブレムで安定しています。冷却とダウンロードの性能はMoravianの方が上ですから、こっちで良かったのだと信じてます。。。
とりとめも無く思ったことを書きました。。
by g-log | 2011-06-01 19:49 | 機材